給与計算コラム 賞与支給額の計算(社会保険料・雇用保険料・所得税)と、各種届出・納付の全ステップ解説

2018.11.24

賞与支給額の計算(社会保険料・雇用保険料・所得税)と、各種届出・納付の全ステップ解説


賞与にかかる保険料や税額の計算は、毎月支給する給与とは異なる点があるため、気をつける必要があります。

  • ステップ① 支給額の決定
  • ステップ② 保険料、所得税の計算
  • ステップ③ 振込手続き(現金支給の場合は金銭の用意)
  • ステップ④ 明細書の作成、交付
  • ステップ⑤ 賞与支給後の各種届出・所得税の納付

このコラムではポイントとなる、「ステップ① 支給額の決定」「ステップ② 保険料、所得税の計算」「ステップ⑤ 賞与支給後の各種届出・所得税の納付」について解説します。

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ステップ① 支給額の決定

会社で定めた支給額決定のルールに基づいて、賞与額を算定します。
業績や能力その他の事項の評価に基づいて支給額を決定することとしている場合は、就業規則や給与規程等に定められた評価期間を確認し、その間の実績等に基づいて評価および支給額の決定を行います。

支給対象者についても就業規則等を確認しましょう。

例えば「賞与は、○月○日時点に在籍している者に対し支給する。」と規定されている場合は、その時点で退職が予定されている者を除いて計算します。

ステップ② 保険料、所得税の計算

社会保険料の計算

賞与にかかる社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)は、毎月支給する給与計算のときとは異なり、「標準賞与額」に保険料率(被保険者負担の率)を乗じて算出します。 「標準賞与額」とは、賞与額の1,000円未満を切り捨てた額をいいます。

給与計算のとき…「標準報酬月額」×保険料率(被保険者負担の率)
賞与計算のとき…「標準賞与額」×保険料率(被保険者負担の率)

求めた額に1円未満の端数が生じたときは、50銭以下を切り捨て、51銭以上は1円に切り上げたものを給与から控除します。
事業主と被保険者の間で端数処理に関する特約がある場合には、特約に基づき処理をすることができます。

標準賞与の上限額

保険料算出の基となる標準賞与額には上限額が設けられています。そのため、高額の賞与を支給する者については保険料計算の際に、徴収過多とならないよう留意する必要があります。

健康保険・介護保険

標準賞与額は、4月1日から翌年3月31日の1年間で累計し、573万円が上限額とされます。

例)6月と12月に300万円ずつの賞与を支払った場合
6月は「300万円×保険料率」で算出しますが、12月は累計で573万円を超過するため、「300万円×保険料率」ではなく「240万円×保険料率」により保険料を算出することとなります。

なお、転職により入社した従業員の場合、転職前後の保険者が同じ(例:前後とも「協会けんぽ」の事業所)であれば、転職前に受けていた賞与額も含めて累計額を算出することができます。
※「健康保険標準賞与額累計申出書」を提出。


厚生年金保険

年間の累計ではなく賞与支給ごと(同月に2回以上の賞与支給があったときは合算)に150万円の上限額を適用します。

例)6月と12月に300万円ずつの賞与を支払った場合、どちらも上限額を超えているため、300万円ではなく150万円に保険料率を乗じます。 6月は「150万円×保険料率」、12月も「150万円×保険料率」により算出します。



退職予定社の社会保険料

社会保険では、被保険者の資格を喪失した月の前月までに支払われた賞与が、保険料徴収の対象とされます。したがって、資格喪失月に支払われた賞与からは保険料を徴収しないこととなります。

例)7月10日賞与支給、7月21日資格喪失の場合
支給月と資格喪失月が同じため、7月10日に支払う賞与からは社会保険料(健康保険料、介護保険料、健康保険料)を徴収する必要がありません。賞与を支給(保険料を控除)した後に退職の申し出があり、賞与支給月に被保険者の資格を喪失することとなった場合は、該当者に保険料を返還します。
ただし、賞与を支払った月の月末に退職をする場合は、通常通り保険料を徴収しますので気をつけてください。
退職日の翌日を「資格喪失日」としている点に関係があります。
7月31日に退職したときは、資格喪失日が8月1日となります。
7月10日に支給した賞与は、資格を喪失した月(8月)の前月に支払ったものとなるため、保険料は徴収されるのです。


雇用保険料の計算

賞与にかかる雇用保険料は、賞与支給額×保険料率(被保険者負担の率)により算出します。
社会保険料計算では、1,000円未満を切り捨てた額(標準賞与額)に保険料率を乗じますが、雇用保険料計算の際は、1,000円未満を切り捨てずに保険料率を乗じます。また、保険料徴収の対象となる賞与額の上限は設けられていません。

退職予定者の雇用保険料

賞与支給月に資格喪失を予定している者であっても、賞与支給額×保険料率(被保険者負担の率)により算出した額を控除します。


所得税の計算

賞与にかかる所得税は、原則として、前月の給与額から社会保険料等を控除した額を算出し、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(国税庁サイト)により求めます。

表には、甲欄・乙欄の表示があります。給与所得者の扶養控除等申告書を会社に提出している者は甲欄を、提出がない者は乙欄を使います。甲欄の所得税率は原則として、前月の給与額から社会保険料等を控除した額を算出し、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表を用いて扶養親族数と前月の社会保険料等控除後の額に応じた率を求めます。 乙欄は扶養親族数は用いず、前月の社会保険料等控除後の額により所得税率を求めます。

次の場合は、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表ではなく、給与計算時と同じく月額表を用います。

前月中の給与がない場合

社会保険料等控除後の賞与の金額を6(その賞与の計算の基礎となった期間が6ヶ月を超える場合は12)で除し、月額表の甲欄により、その金額と扶養親族等の数とに応じた税額を求めます。 乙欄の場合も、賞与額÷6(または12)により算出した金額を月額表にあてはめて求めます。

賞与額が前月給与額の10倍を超える場合

次のAからDの順に求めます。

  • A. 社会保険料等控除後の賞与の金額を6(その賞与の計算の基礎となった期間が6ヶ月を超える場合は12)で除し、その金額と前月中の社会保険料等控除後の給与との合計額を求めます
  • B. 月額表の甲欄を使い、Aの合計額に対する税額を求めます
  • C. 月額表の甲欄を使い、前月中の社会保険料等控除後の給与等についての税額を求めます
  • D. ABCにより求めた金額を6倍(または12倍)した金額が、その賞与に対する源泉徴収税額となります

乙欄の場合は、上記手順のうち甲欄を乙欄と読み替えて計算を進めます。

ステップ⑤ 賞与支給後の各種届出・所得税の納付

社会保険

健康保険および厚生年金保険の被保険者に対し賞与を支払ったときは、支給日から5日以内に被保険者賞与支払届と被保険者賞与支払届総括表を年金事務所に提出します※。保険料の納期限は、支給月の翌月末日です。
※ 健康保険組合の適用事業所については、健康保険組合にも提出します。

労働保険

労災保険および雇用保険については、賞与支給後に提出する書類はありません。
4月から翌年3月までの間に支払いが確定した賞与額を、年間の賃金総額に含めた上で労働保険料を計算し、毎年7月10日までに申告・納付(「年度更新」といいます。)します。 なお、労災保険の保険料については全額を事業主が負担することとされているため、賞与支給時に被保険者負担分の保険料計算は生じません。

所得税

所得税は、賞与を支払った月の翌月10日までに現金に納付書を添えて納付(または預貯金口座からの振替納税、インターネットバンキング等を利用して電子納税等)します。 納期の特例を受けているときは、1月から6月までに源泉徴収した所得税は7月10日、7月から12月までに源泉徴収した所得税は翌年1月20日が、それぞれ納付期限になります。


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ライター
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