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第10回 イケイケ社長のイケない人材募集

通信機器販売業「(株)サムライ商事」代表取締役社長 山田義三(40歳)と20名の従業員の日々の
活動から山田社長が気付く経営の課題を取り上げます。

その原因・解決策を一緒に考えることで現実の経営のヒントとして下さい。

優秀な人材が欲しい!

毎週定例の幹部会で開発部門長の猿山部長から「優秀な人材が欲しい」という要望が上がった。

わが社は小さいながら20年の業歴があり、猿山部長の他に創業当初からいる優秀な技術者が1名いる。 しかし彼らも50歳に差し掛かる年代だ。その他の人材と言っても仕事を任せられる程の意欲のある部下はいない。 未だにこの2人が開発するのが最も効率的なのだ。確かに優秀な人材を確保する必要がありそうだ。 今はインターネット技術の進化のスピードも速いので若手の技術者が欲しいところだ。

原因・解決策
「優秀な人材」は確かに必要です。
博学聡明で機転応用が効き、素直で向上心があり常に高いモチベーションを維持しながらも誰にでも気さくに付き合いができ、上司を立ててくれる人物でしょうか。若くしてそんな人物がサムライ商事にきたら驚きです。いえ、サムライ商事でなくとも有名優良企業にだって滅多にお目にかかれないでしょう。

まず、自社が求める人材をもっと具体的な要素で考えてゆく必要があります。しかし大体において理想的な人物像になってしまいがちです。そこで「不可欠」である要素に優先順位を付け、その優先順位に従って確保する必要があります。
求人広告に人材募集掲載!!

早速、猿山部長に指示して求人誌を5社ほど呼んでもらった。
どこも大体同じく「今は売り手市場なので優秀な若手人材はなかなか集まらない」。
そこで「自社の募集要項を大きくPRできるようにする必要がある」とのこと。

要するにカラー広告や若干大きめの募集枠を確保することで広告費用が徐々に嵩んでくるという寸法だ。思っていたよりも費用は結構かかることになったが、優秀な人材を確保するための投資として実施することにした。

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【募集職種】通信ソフトの開発技術者
【募集人数】若干名
【待遇 】前給考慮の上優遇
【休日】土日祝日・夏期休暇・年末年始休暇
【会社の特徴】
当社は通信機器の販売会社でお客様のご要望に合わせた連携ソフトも開発しています。
事務所は○○駅至近の新しいビルで便利です。
【メッセージ】
当社で扱っている通信機器のソフトウェア開発の技術者を募集しています。
技術者としての意欲がある方の応募をお待ちしています。
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最後に定型の会社概要には写真があると注目度が上がるというので追加費用を払って写真を1点掲載することになった。そこで最近駅前に移転した事務所ビルの写真を掲載した。

原因・解決策
「会社の特徴」は単なる会社の説明ではありません。
他社に負けない強みや市場からみた特徴をアピールしなければなりません。応募者は当然他社との比較をしていますからここでその違いや優位なポイントをしっかり伝える必要があります。また「メッセージ」では応募者がサムライ商事にきたらどんなことができるのか、どんなメリットがあるのかをより具体的に提示するべきです。そうでなければそもそも「意欲のある方」が来るはずがありません。
掲載初日から10件の応募!

掲載した求人誌から初日で10件の問い合わせがきた。
この調子だと応募もたくさんきそうだ。金は掛ったけど効果はあったかな。 2次面接では社長の私が最終面接を行うことにして早速、猿山部長に応募者に面接するように指示しよう。「猿山くん、猿山くん、早速応募者と面接をして良さそうな人材がいたら私が面接して決めよう。わが社の将来を担う人材だ。宜しく頼むよ!」

2週間が経った。応募総件数は48件。わが社始まって以来これほど大勢の応募があったことはない。求人広告は大成功だったな。それにしても猿山部長によると最終面接者が23名もいるらしい。お陰でここ1ヶ月のスケジュールが詰まってしまっている。どうも会議と面接とで外出することがほとんどできないようだ。これはこれで困るが優秀な人材確保のためだ、仕方がない。

原因・解決策
この求人媒体はかなり優秀なようです。
名もないサムライ商事にこれだけ多くの応募者が出たということは媒体としての役割は十分に果たしていると言って良いでしょう。

ただこれが求人広告会社が「大成功」だったというだけでサムライ商事の人材採用が成功したとは言えません。まして48人を部長が最終面接で約半分の23名を社長が面接しなければなりません。 果たして募集が若干名なのに最終面接で23人も社長が面談するというのは如何なものでしょうか。
どういうことだ!?

ついに23名の面接が終わった。
結局採用したのは1名。但し決して「優秀な人材」という訳でもない。若いがインターネット技術に関しては趣味程度でしか経験がないが「真面目そうだから勉強して育つだろう」という見込みでなんとか採用したものだ。面接した23名は正直言ってどれもこれもパッとしない人材ばかりだった。インターネット技術者など、ついぞ現れなかったし、結局応募してきた大多数は40代後半〜50代の年配者だったし、どうしてこういう結果になってしまったのか・・・!?

原因・解決策
先ず募集広告に「インターネット技術者」とは一言も書いていないのにそれを期待する方が間違いです。
人材募集や面接おいては会社も応募者から選別される側であることをもう一度再認識した方が良いでしょう。サムライ商事の問題は幹部育成の失敗です。幹部が面接しているにも関わらず約半分を社長に通して社長の工数を煩わす始末です。
これは幹部に判断力が備わっておらず他の仕事においても同様に全ての事柄を社長の判断、社長待ちの状態になっていることが伺えます。

人材を増やし組織を大きくする上で重要なのはより高い次元から適切な判断ができる幹部を育成することです。そう考えると「優秀な人材」というのは「採用する」ものではなく「育てる」ものなのです。特に中小企業においては可能性のある人材を見つけて根気よく育成することができるかどうかが重要かも知れません。 採用を考えるとき同時に育成についても、2〜3年後に具体的にどんな能力のもった人材がどれだけ必要かを常にメモに書きだしておきましょう。